仏の弟子になったことを表す名前と言われている『戒名』は、位牌や墓石に記されます。
戒名は本来、出家して仏門に入った弟子に与えられる名前ですが、現在は故人に授ける名前としても広く知られています。
そもそも戒名は二文字で構成されていましたが、それに院号や道号、位号が加わり長くなっています。
一般的には戒名と呼ばれていますが、宗派によってその呼び名に違いがあります。
浄土真宗においては「法名」と呼ばれ、日蓮宗においては「法号」と呼ばれています。
戒名はそもそも日本で誕生したものではありません。
仏教自体も日本で誕生したものではない事はご存知だと思いますが、戒名においては中国で誕生したと言われています。
中国に仏教が伝わった際に「号の風習」を取り入れて誕生したものと伝えられています。
仏教は西暦538年に日本に伝えられたと言われています。
日本で最初に戒名を授けられたのが「聖武天皇」です。
聖武天皇は仏教の鎮護国家思想に基づいて国分寺の建立などに力を注いだことから「勝満」との戒名を授けられました。
現在のように故人に対し戒名をつけることが一般的になったのは、江戸時代以降のことです。
江戸幕府により、檀家制度が確立され、庶民も必ず寺院に属さなくてはならなくなりました。
寺院に属すことで僧侶が故人に対し戒名を授けたのです。
そんな戒名には「位」があることをご存知でしょうか。
戒名の構成は宗派、生前の地位、お布施の金額により決められます。
基本的に戒名は二文字で表現され、身分関係なく平等であることを表しています。
しかし、実際には二文字以外の院号、道号、位号などが上下に付くのが一般的で、それらが位を示しています。
院号は誰にもでつけられるものではありません。
寺院や宗派、地域に貢献した人に授けられるものです。
院号よりも院殿号の方が格上とされており、歴史的に有名な将軍などに贈られています。
院号・院殿号は基本的に戒名に上に付ける名です。
本来、道号は仏道を修得した位の高い僧侶を表現するものです。
誰もが知っているあの有名な一休さんの「一休」こそ道号です。
こちらも戒名の上に付ける名であり、号や字に該当するものです。
道号は宗派によって用いる場合と用いない場合があります。
日蓮宗、真言宗、天台宗、浄土宗、曹洞宗、臨済宗などほとんどの宗派で用いているのですが、浄土真宗や律宗では用いることがありません。
戒名の下につける名で大姉や居士などが該当します。
位号は仏教徒の階級を表すもので、年齢や性別により違いがあります。
成人以上の男女(男性が居士、女性が大姉)で、信仰心が篤く、寺院や一般社会に貢献した人に授けられるものです。
ちなみに、院殿号では大居士・清大姉が用いられます。
成人以上の男女(男性が禅定門、女性が禅定尼)で、居士・大姉に次ぎ格式があります。
満18歳以上でお亡くなりになられた方に対して付けられるものです。
信士は男性、信女は女性であり、宗派によりその名に違いがあります。
信士・信女の他に、清士・清女、清浄士・清浄女、善士・善女などがあります。
未成年の男女のことを指しており、満18歳までにお亡くなりになられた方に対して付けられます。
こちらも宗派によって違いがあり、他にも大童子・大童女、清童子・清童女、禅童子・禅童女などがあります。
2歳から小学校入学前までの男女に授けられます。
男子が幼子、女子が幼女です。
2歳までの乳幼児に授けられます。
1歳までの乳幼児や水子(性別が判る場合)に用いられます。
死産した性別の判らない方に対して付けられます。
現在は「みずこ」と呼ぶことがほとんどですが、正しくは「すいし」「すいじ」と読みます。
宗派によって用いない場合があります。
位号を性別ごとに階級順にまとめると以下になります。
男性:大居士・居士・禅定門・清信士・信士
女性:清大姉・大姉・禅定尼・清信女・信女
子:童子・童女・孩子・孩女・嬰子・嬰女
流死産児:水子
戒名の構成は上から「院号・院殿号」「道号」「戒名」「位号」「置字」の順に構成されています。
本来戒名は二文字を指しているものですが、現在では上記をまとめて戒名と呼んでいます。
「置字」とは、位牌を総称する言葉です。
一例ですが、代表的なものに貴霊や高霊、霊位、順霊、霊儀などがあります。
戒名は住職から授けられるものですが、戒名を頂くにはお布施(戒名料)が必要になります。
戒名の料金ははっきりと決まっているものではありません。
本来はお寺側から金額を指定するものではありませんが、ある程度相場が決まっています。
居士・大姉で50万円~80万円、信士・信女で30万円~50万円だと言われています。
ただ、戒名料を支払えない場合もあると思います。
その際には葬儀社やお寺などに相談することをおすすめします。