お墓は必要?お墓はいらない?

「お墓は、本当に必要なのだろうか」

ご両親を見送ったあと、あるいはご自身の終活を考え始めたとき、ふとそんな疑問が浮かぶ方が増えています。

お墓は必要か

樹木葬、納骨堂、合祀墓、散骨、手元供養。供養のかたちは、この20年ほどで驚くほど多様になりました。「子どもに負担をかけたくない」「継ぐ人がいない」「費用を抑えたい」。そうした理由から、墓石を建てない選択をする方も、いまでは少なくありません。

一方で、「本当は家族のお墓が欲しい。でも、いまの時代にそれはわがままだろうか」と、心のどこかで迷い続けている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、まず現代の供養の選択肢をひとつずつ整理し、それぞれの特徴と費用、そして後悔しやすいポイントを、できる限り中立的にお伝えします。そのうえで、なぜ日本人は長いあいだお墓を建て続けてきたのか、お墓が「人が生きた証」として、また「家族の絆をつなぐ場」として、どのような役割を果たしてきたのかを丁寧に掘り下げていきます。

どの選択にも、正解も不正解もありません。ただ、もし迷っているなら、その迷いの正体を一度きちんと見つめてみる価値はある。そう考えて、この記事を書きました。

この記事でわかること

  • 樹木葬・納骨堂・合祀墓・散骨・手元供養など、供養方法の種類と違い
  • それぞれの費用の目安、メリット、そして後悔しやすいポイント
  • 「永代供養」という言葉の正しい意味
  • お墓が「必要」と言われてきた理由と、お墓が果たす5つの役割
  • 樹木葬とお墓で迷ったときに、自分に問いかけてほしい7つの質問

「お墓は本当に必要?」と迷う人が増えている背景

まず、いまの日本でお墓をめぐる状況がどう変化しているのか、数字で確認しておきましょう。

2025年にお墓を購入した人を対象とした全国調査※1によると、樹木葬を選んだ人は47.4%。合祀墓・合葬墓が16.4%、納骨堂が15.5%と続き、墓石を建てる一般墓は15.2%でした。お墓選びで重視した点としては「お墓の種類」(50.0%)、「金額」(43.9%)に次いで「継承者不要」(38.8%)が挙がっています。

2025年にお墓を購入した人を対象とした全国調査によると、樹木葬47.4%。合祀墓・合葬墓16.4%、納骨堂15.5%、墓石を建てる一般墓15.2%

また、厚生労働省の統計※2によると、すでにあるお墓から遺骨を別の場所に移す「改葬」の件数は、2024年度に全国で176,105件。2015年度の91,567件から、10年足らずで約2倍に増えました。いわゆる「墓じまい」が、もはや珍しいことではなくなっているのがわかります。

こうした変化の背景には、いくつかの要因が重なっています。

  • 少子化と核家族化によって、お墓を「継ぐ人」が見えにくくなった
  • 進学や就職で故郷を離れ、実家のお墓が遠くなった
  • 「子どもや孫に負担をかけたくない」という親心
  • 墓石を建てる費用や、管理費・お手入れへの不安
  • 宗教観や家族観の変化、そして「個人の意思」を尊重する価値観の広がり

実際、樹木葬を選んだ人を対象とした調査※3では、選んだ理由の第1位は「子どもに負担をかけたくない」(46.3%)でした。

ただ、ここでひとつ注意しておきたいことがあります。これらの数字は「お墓が不要になった」ことを示しているのではなく、「選択肢が増えた」ことを示している、という点です。

かつては、お墓といえば墓石を建てる一般墓しかありませんでした。いまは選べる。選べるからこそ、迷う。そして迷いの中で、「本当はどうしたいのか」という自分の気持ちが、費用や手間といった現実的な問題に押し流されてしまうことも少なくありません。

だからこそ、まずはそれぞれの選択肢を正しく知ることから始めましょう。


供養のかたちは一つではない。現代の主な選択肢を整理する

ここでは、現在日本で選ばれている主な供養方法を、費用の目安、メリット、注意点とあわせてご紹介します。費用はいずれも目安であり、地域や施設、契約内容によって大きく変わることをあらかじめお含みおきください。

一般墓(墓石を建てるお墓)

一般墓(墓石を建てるお墓)

墓地の区画を使用する権利(永代使用権)を取得し、そこに墓石を建てる、最も伝統的なかたちです。家族代々で受け継いでいく「家墓」が主流ですが、近年は夫婦だけの「夫婦墓」や、一人のための「個人墓」、承継者がいなくても建てられる「永代供養付きの一般墓」も増えています。

  • 費用の目安:永代使用料+墓石代+年間管理費。平均購入価格は152.0万円※1ですが、地域や墓地の種類、石材、大きさによって100万円を下回るものから数百万円のものまで幅があります。
  • メリット:故人固有の「場所」があり、名前が刻まれる。複数の遺骨を納められる。将来、事情が変われば遺骨を取り出すこと(改葬・分骨)ができる。デザインの自由度が高く、故人らしさや家族の想いをかたちにできる。
  • 注意点:承継者と年間管理費が必要(永代供養付きの場合を除く)。掃除や草取りなどの手入れが要る。将来「墓じまい」をする場合には撤去費用がかかる。

樹木葬

樹木葬

墓石の代わりに樹木や草花をシンボルとして、その周囲に遺骨を埋葬する方法です。1999年に岩手県一関市の寺院が始めたのが日本初とされ、この四半世紀で急速に広まりました。

自然の山林に埋葬する「里山型」と、霊園の一角に整備された区画に埋葬する「公園型・庭園型」があり、現在は都市部を中心に公園型・庭園型が主流です。

遺骨の扱いには、ひとりずつ個別に埋葬する「個別型」、最初から他の方の遺骨と一緒に埋葬する「合祀型」、そして一定期間(13回忌、33回忌など)は個別に安置し、その後に合祀する「期限付き個別型」があります。

  • 費用の目安:平均購入価格は71.7万円※1。5万円程度の合祀型から100万円を超える個別型まで幅広く、近年は個別型を選ぶ人が増えたことで平均額が上昇傾向にあります。年間管理費が「かからない」と答えた人は83.0%※4で、維持費の負担が少ないのが特徴です。
  • メリット:承継者が不要。費用を抑えやすい。「自然に還る」というイメージに共感する人が多い。
  • 注意点:合祀された後は遺骨を取り出せない。「自然に還る」イメージと実態(骨壺のまま納める施設や、地中のカロートに納める施設もある)にギャップがある場合がある。納められる人数に上限がある(夫婦2人までなど)。立地によってはお参りに不便。

樹木葬の経験者を対象とした民間調査※5では、26.0%が「後悔している・少し後悔している」と回答し、その理由として「親族との認識違い」「アクセスの不便さ」などが挙がっています。

納骨堂

納骨堂

遺骨を屋内の専用スペースに納める施設です。扉付きの棚に骨壺を納める「ロッカー式」、上段に仏壇・下段に納骨スペースを設けた「仏壇式」、ICカードをかざすと遺骨が参拝ブースまで自動で運ばれてくる「自動搬送式(機械式)」、位牌をシンボルとする「位牌式」などの種類があります。

  • 費用の目安:平均購入価格は81.5万円※1。ロッカー式や位牌式は比較的安価で、自動搬送式や仏壇式は高めの傾向があります。
  • メリット:駅の近くなどアクセスの良い立地が多い。天候に左右されずお参りできる。掃除などの手入れが不要。
  • 注意点:多くの施設で個別安置に期限があり、期限後は合祀される。生花や線香のお供えが制限される施設もある。建物の老朽化や運営主体の経営状況に左右されるリスクがあり、近年、北海道で納骨堂が経営破綻して閉鎖された事例も報道されました。

合祀墓・合葬墓(永代供養墓)

合祀墓・合葬墓

他の方の遺骨と一緒に、ひとつの墓所に埋葬する方法です。寺院や霊園が管理・供養を続けてくれるため「永代供養墓」と呼ばれることもあります。合祀墓(ごうしぼ)は遺骨が他の遺骨と混ざりますが、合葬墓(がっそうぼ)は個々の骨壺が分けられます。しかし、一定期間後には合祀墓へ移されます。

  • 費用の目安:数万円から30万円程度と、供養方法の中では最も費用を抑えられます。
  • メリット:承継者も管理費も不要。費用負担が最小。寺院・霊園による定期的な供養がある。
  • 注意点:一度合祀すると、遺骨を取り出すことは二度とできません。個別の墓標がないため、遺族が「手を合わせる対象」を実感しにくいと感じる場合があります。

散骨

散骨

遺骨をパウダー状(一般に2mm以下)に粉骨し、海や山などに撒く方法です。海に撒く「海洋散骨」が主流で、船を貸し切る方法、他の家族と乗り合う方法、業者に委託する方法があります。

散骨そのものを直接規制する法律はなく、1991年に法務省が「葬送の一環として節度をもって行われる限り、刑法の遺骨遺棄罪には当たらない」という趣旨の見解を示したとされています。2021年3月には厚生労働省が散骨事業者向けのガイドライン※6を公表し、散骨を行う場所や方法の目安が示されました。ただし、条例で散骨を規制している自治体もあり、私有地や漁場、観光地の近くでの散骨は避ける必要があります。

  • 費用の目安:委託散骨で5万円前後から、船を貸し切る場合は20〜30万円程度。
  • メリット:自然への回帰を望む方に合う。費用を抑えられ、管理も不要。
  • 注意点:遺骨が手元に残らない。あとになって「手を合わせる場所が欲しい」と思っても、取り戻すことはできません。全骨を散骨するか一部を残すか、親族の同意は得られているかを、事前に十分話し合う必要があります。

手元供養

手元供養

遺骨を自宅で保管し、身近に置いて供養する方法です。小さな骨壺に納める、遺骨の一部をペンダントなどのアクセサリーに加工する、遺骨からダイヤモンドやプレートを作る、といった方法があります。

自宅で遺骨を保管すること自体は違法ではありません。ただし、「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」※7では墓地以外の場所に遺骨を埋めることが禁じられているため、自宅の庭などに埋めることはできません。

  • 費用の目安:数千円の骨壺から、数十万円のダイヤモンド加工まで。
  • メリット:いつでも身近に故人を感じられる。費用を抑えられる。
  • 注意点:保管している人が亡くなった後、遺骨をどうするかという問題が残ります。多くの場合、手元供養は「一時的な選択」であり、最終的にはお墓・合祀・散骨などの行き先を決める必要があります。

本山納骨

本山納骨

浄土真宗など一部の宗派で行われている、宗派の本山に遺骨(多くは分骨)を納める方法です。費用は数万円程度からで、基本的に合祀となります。他の供養方法と組み合わせて、分骨した一部を本山に納めるケースが一般的です。

供養方法の比較表

供養方法費用の目安承継者遺骨の取り出し手を合わせる「場所」
一般墓100〜250万円前後(平均152.0万円)原則必要(永代供養付きなら不要)可能固有の墓所がある
樹木葬5〜100万円台(平均71.7万円)不要合祀後は不可区画・シンボルツリー
納骨堂10〜150万円(平均81.5万円)不要が多い期限内は可、合祀後は不可屋内の参拝スペース
合祀墓数万〜30万円程度不要不可共同の墓標
散骨5〜30万円程度不要不可(遺骨が残らない)なし(散骨地点)
手元供養数千円〜数十万円――自宅
費用はいずれも目安です。平均購入価格は※1による

こうして並べてみると、それぞれの方法は「費用」「承継の負担」「遺骨の可逆性」「手を合わせる場所の有無」という点で、はっきりと性格が異なることがわかります。どれが優れているということではなく、何を大切にするかによって、選ぶべき答えが変わるのです。


「永代供養」という言葉の意味を正しく知っておく

供養方法を調べていると、必ず目にするのが「永代供養」という言葉です。ここで意味を整理しておきましょう。

永代供養とは、遺族に代わって寺院や霊園が遺骨の管理と供養を続けてくれる仕組みのことです。承継者がいない方や、子どもに負担をかけたくない方にとって心強い制度ですが、「永代」は「永遠」という意味ではありません。

多くの永代供養では、個別に安置される期間が「17回忌まで」「33回忌まで」「50回忌まで」などと定められており、期限を過ぎると他の方の遺骨と一緒に合祀されます。合祀された後は、遺骨を取り出すことはできません。「永代供養だから、ずっとそのままの形で残る」と思っていた、という認識のズレは、後悔につながりやすいポイントのひとつです。

もうひとつ知っておいていただきたいのは、「永代供養=樹木葬や納骨堂」ではない、ということです。永代供養が付いた一般墓を用意している霊園も増えており、「承継者がいないから、墓石を建てるお墓は諦めるしかない」とは限りません。

契約の前には、次の点を必ず確認してください。

  • 個別安置の期間はいつまでか(何回忌、何年)
  • 期限後の遺骨はどう扱われるか(合祀の場所、供養の内容)
  • 年間管理費の有無と金額
  • 運営主体は誰か(寺院、公営、民間企業)と、その経営の安定性

それでも、なぜ「お墓は必要」と言われてきたのか。お墓が果たす5つの役割

ここまで、供養の選択肢を並べてきました。ここからは、お墓そのものについて考えてみたいと思います。

あらかじめお断りしておくと、これは他の供養方法を否定するためのものではありません。「なぜ人は、何千年ものあいだ墓を作り続けてきたのか」。その理由を知ることが、自分にとっての答えを見つける手がかりになると考えるからです。

1. 「人が生きた証」を、かたちとして残す

墓石に刻まれたメッセージ

人が亡くなると、身体は火葬され、遺品は整理され、暮らしていた部屋は片づけられます。やがてその人は、写真と記憶の中だけの存在になっていきます。

けれど、お墓には名前が刻まれます。生年月日、亡くなった日、戒名や法名、ときには生前好きだった言葉や、家族からのメッセージ。「この人は確かにここに生きていた」という事実を、風雨に耐えて何百年も残る「石」に刻む。それは故人の尊厳を守る行為であり、遺された人にとっての「拠り所」をつくる行為でもあります。

散骨や合祀では、このような「かたち」は残りません。それを「潔い」と感じる方もいれば、「寂しい」と感じる方もいるでしょう。どちらも自然な感情です。ただ、後者の気持ちは、実際にかたちを失ってみるまで気づきにくい、ということは知っておいていただきたいのです。

2. 家族が「集まる場所」になる

家族が集まるお墓

お墓参りは、故人のためだけのものではありません。遺された人が、悲しみと折り合いをつけていくための時間でもあります。

グリーフケア(悲嘆へのケア)の分野では、故人との絆を無理に断ち切るのではなく、かたちを変えて持ち続けること(「継続する絆」)が、心の回復に役立つと考えられています。お墓は、その絆を持ち続けるための「場所」です。

お盆やお彼岸、命日に家族が集まり、墓石を洗い、花を供え、近況を報告する。ふだんは離れて暮らす兄弟姉妹が顔を合わせる、数少ない機会にもなります。

シニア層を対象とした意識調査※8では、76.6%の人が「毎年お墓参りに行く」と答え、その理由は「ご先祖様への供養」(61.2%)に次いで「毎年の習慣・年中行事」(47.4%)でした。お墓参りが、生活のリズムの中に組み込まれた「家族の行事」であることがうかがえます。

3. 家族の絆を、世代を超えてつなぐ

お墓は、いま生きている家族どうしの「横の絆」だけでなく、先祖から子孫へと続く「縦の絆」もつなぎます。

孫やひ孫が、会ったことのない祖父母や曾祖父母の名前を墓石に見つける。「自分は、この人たちから続いているんだ」と知る。自分のルーツを知ることは、その人の生きる土台になります。何世代も先の家族に、「あなたはひとりではない」と伝え続けるもの。お墓には、そんな力があります。

「子どもに負担をかけたくない」という気持ちは、とても尊いものです。しかし一度、立ち止まって考えてみてください。子どもや孫にとって、お墓は本当に「負担」なのでしょうか。

実際に墓じまいをした方の中には、「手を合わせる場所を失って初めて、あの場所が自分の支えだったと気づいた」と語る方もいらっしゃいます。負担と感じるか、残してほしいと感じるか。その答えは家族ごとに違います。だからこそ、決める前に、ご家族に聞いてみていただきたいのです。

4. 人生の節目に立ち返る「心の座標軸」になる

子どもが生まれた朝。手術を前にした夜。合格発表の日。娘が家を出る日の夕暮れ。初めて孫を抱いた春。

人生の節目に、私たちは自然と、大切な人のことを思い出します。「ありがとう」「ごめんなさい」「お願いします」。声に出すでもなく、静かに目を閉じて手を合わせる。その相手はもうこの世にいないけれど、報告したいこと、詫びたいこと、願いたいことは、生きているかぎり何度でも生まれます。

そのとき「行ける場所がある」ということ。それは、いまを生きる人にとっての「心の座標軸」になります。迷ったとき、立ち止まったとき、帰ってこられる場所。お墓は、故人のためだけでなく、いまを生きる家族のためにあるものでもあるのです。

5. 遺骨の行き先を「決めきる」安心と、「選び直せる」余地

合祀や散骨は、一度行うと元に戻せません。それに対して墓石を建てるお墓は、将来、家族の事情が変わったときに、改葬(お墓の引っ越し)や分骨、あるいは墓じまいといった選択肢が残ります。

つまりお墓は、「いま決めたことを、将来の家族が選び直せる」余地を残せる供養のかたちなのです。これは、意外と見落とされがちな大きな価値です。

裏を返せば、お墓は「最終決定」でなくてもかまいません。「いったん、ここに眠ってもらう」。そのくらいの気持ちで建ててよいものだと、私たちは考えています。


日本人はなぜ「石」でお墓を建ててきたのか。お墓の歴史を少しだけ

石舞台古墳

お墓の役割をより深く理解するために、日本のお墓の歴史を簡単にたどってみましょう。

日本では、縄文時代の遺跡からすでに丁寧に埋葬された人骨が見つかっています。古墳時代には、権力者のために巨大な古墳が築かれました。6世紀に仏教が伝わると火葬の習慣が広まり、鎌倉時代から室町時代にかけては、武士や貴族のあいだで五輪塔や宝篋印塔などの石塔が建てられるようになります。

庶民にまでお墓が広まったのは、江戸時代のことです。寺請制度(檀家制度)によって人々は必ずどこかの寺院に所属することになり、寺の境内に墓を持つことが一般化しました。石の墓標が庶民に普及したのは、江戸時代の中期以降といわれています。

明治時代になると、民法によって「家」を単位とする制度が整えられ、「○○家之墓」という家墓のかたちが定着していきます。戦後の1948年には「墓地、埋葬等に関する法律」が制定され、お墓は墓地としての許可を受けた場所にしか設けられないと定められました。高度経済成長期には都市に人口が集中し、郊外に公営・民営の霊園が次々と造成されました。

そして1990年代以降、散骨や樹木葬といった新しい供養のかたちが登場し、現在の多様化へとつながっています。

こうして振り返ると、お墓のかたちは時代とともに変わり続けてきたことがわかります。ただ、ひとつだけ変わらないものがあります。それは、人々が「石」という素材を選び続けてきたことです。

石は、風雨に耐え、何百年、何千年と残ります。古代の石碑も、ヨーロッパの教会墓地の墓石も、日本の五輪塔も、すべて「時間を超えて残るもの」に想いを託した結果です。人は昔から、消えてしまう命を、消えない素材に刻むことで、大切な人の存在を未来へ手渡そうとしてきたのです。

いま起きている供養の多様化は、歴史的に見れば「家墓」というかたちが変わりつつある過渡期といえるでしょう。だからこそ、かたちにとらわれず、「人が生きた証を残す」「家族の絆をつなぐ」というお墓の本質に立ち返って考えるチャンスでもあるのです。


樹木葬とお墓、迷ったときに自分に問いかけたい7つの質問

夕日の中の女性

「お墓にしたい気持ちはある。でも樹木葬のほうが現実的なのかもしれない」。そんなふうに迷っている方に向けて、決める前に自分自身に問いかけてほしい7つの質問を用意しました。

1. その供養は「誰のため」のものですか?

故人の希望なのか、遺される家族の気持ちなのか、あるいは自分自身の安心のためなのか。それぞれの答えが食い違っている場合、どれを優先するのかを意識しておく必要があります。

2. 10年後、30年後、誰が、どこに手を合わせに行きますか?

いまの自分の目線だけでなく、子どもや孫の目線で想像してみてください。彼らが大人になったとき、「行ける場所」があるかどうか。それは彼らにとって、どんな意味を持つでしょうか。

3. 遺骨を「取り出せない」ことを、受け入れられますか?

合祀型の樹木葬や合祀墓、散骨は、後戻りができません。将来、家族の事情が変わる可能性はないか。「あのとき残しておけば」と思う可能性はないか。一度、真剣に考えてみてください。

4. 「負担をかけたくない」ご家族は、本当に負担だと思っていますか?

親が「負担をかけたくない」と考えていた一方で、子どもは「残してほしかった」と思っていた。そんなすれ違いは、決して珍しくありません。ご家族に直接、聞いてみてください。

5. 費用は「総額」と「年数」の両方で考えましたか?

一般墓の平均152.0万円と樹木葬の平均71.7万円※1。差は確かにありますが、お墓は数十年、場合によっては百年以上使うものです。年間管理費を含めた総額を、使う年数で割ってみると、印象が変わることがあります。また近年は、個別型の樹木葬の価格が上昇し、小さな一般墓との差が縮まっているケースもあります。

6. 親族と話し合いましたか?

樹木葬で後悔した理由の上位に「親族との認識違い」が挙がっているように、供養の選択は、自分ひとりの問題ではありません。特に兄弟姉妹や配偶者の親族には、決める前に一言相談しておくことをおすすめします。

7. 「本当はお墓が欲しい」という気持ちに、蓋をしていませんか?

最後に、いちばん大切な質問です。

迷いの多くは、「お墓が欲しい」という気持ちと、「継承・費用・手間」といった現実的な不安とのせめぎ合いから生まれます。

このうち、現実的な不安のほうは、次の章でお伝えするように、いまのお墓であれば解決できることが多くあります。一方で、「本当はお墓が欲しい」という気持ちは、他の何かで代わりにすることができません。

もし、あなたの中にその気持ちがあるなら。それは決してわがままでも、時代遅れでもありません。大切にしてよい気持ちだと、私たちは思います。


現代のお墓は「負担」ではなく「選べる」ものになった

「お墓は負担が大きい」というイメージは、昔ながらの大きな家墓を前提にしたものです。現代のお墓は、その多くの不安に応えられるかたちに変わってきています。

  • 承継者がいなくても建てられる「永代供養付きの一般墓」
    承継者が途絶えた後は霊園や寺院が供養を引き継ぐ仕組みで、「継ぐ人がいないから」という理由でお墓を諦める必要がなくなっています。
  • コンパクトなお墓、夫婦墓、個人墓
    小さな区画に建てる小型のお墓は、費用も手入れの負担も抑えられます。「家」ではなく「自分たち」のためのお墓という考え方も広まっています。
  • 故人らしさを表現するデザイン墓
    「○○家之墓」という形式にとらわれず、好きな言葉や花、モチーフを刻んだデザイン墓が増えています。お墓は「家の象徴」から「その人らしさを残す場所」へと変わりつつあります。
  • 耐震・免震施工
    地震の多い日本では、墓石の倒壊を防ぐ耐震・免震の施工が広まっています。「災害が心配」という不安にも応えられるようになりました。
  • 管理の負担
    年間管理費は霊園によって異なりますが、多くは年数千円から数万円程度です。遠方の場合には、掃除を代行してくれるサービスもあります。
  • 将来の選択肢が残る
    先に触れたとおり、お墓は改葬や分骨、墓じまいが可能です。「いま建てたら、もう変えられない」ものではありません。

お墓はもはや、「建てなければならないもの」でも「重荷として引き継ぐもの」でもありません。数ある供養のかたちの中から、「自分たちの想いに合うから」という理由で選ぶもの。そう考えたとき、お墓が持つ「生きた証を残す」「家族が集まる」「世代をつなぐ」という価値は、いまの時代だからこそ、あらためて見直されてよいのではないでしょうか。


まとめ。正解はひとつではない。けれど「迷い」には向き合ってほしい

この記事では、樹木葬、納骨堂、合祀墓、散骨、手元供養といった現代の供養の選択肢を整理し、そのうえで、お墓が果たしてきた役割を考えてきました。

あらためて確認しておきたいのは、供養のかたちに優劣はない、ということです。樹木葬を選ぶことも、散骨を選ぶことも、それぞれの家族の事情と想いに基づいた、立派な選択です。

ただ、お墓には、他の方法では代わりにしにくい役割があります。

  • 人が生きた証を、かたちとして残す
  • 家族が集まり、悲しみと向き合う場所になる
  • 先祖から子孫へ、世代を超えて絆をつなぐ
  • 人生の節目に立ち返る、心の座標軸になる
  • 将来、家族が選び直せる余地を残す

もしあなたが、「本当はお墓にしたいけれど、樹木葬にしようか迷っている」のなら。その迷いの中にある「お墓にしたい」という気持ちを、どうか軽く扱わないでください。継承や費用、手間といった不安の多くは、いまのお墓であれば解決の道があります。けれど、その気持ちだけは、あとから取り戻すことができないかもしれないからです。

お墓は、亡くなった人のためだけのものではありません。いまを生きる家族のためにあり、そして子や孫、その先の家族にまで、静かに力を与え続けるもの。

ただそこにある。それだけで、誰かの支えになる。お墓とは、そういうものだと私たちは考えています。


よくある質問

Q. お墓を建てないと、法律上の問題はありますか?

A. ありません。遺骨をお墓に納める義務を定めた法律はなく、自宅で保管することも違法ではありません。ただし「墓地、埋葬等に関する法律」※7により、墓地として許可された場所以外に遺骨を埋めることは禁じられています。自宅の庭に埋める、といったことはできません。

Q. 承継者がいなくても、墓石を建てるお墓は持てますか?

A. 持てます。承継者が途絶えた後は霊園や寺院が供養を引き継ぐ「永代供養付きの一般墓」を用意している霊園が増えています。夫婦だけ、自分ひとりのためのお墓を建てる方も珍しくありません。

Q. 樹木葬にした後で、やはりお墓を建てたくなったら?

A. 個別型の樹木葬で、個別安置の期間内であれば、遺骨を取り出して改葬できる場合があります。ただし、合祀された後は取り出せません。契約前に、個別安置の期間と、期間内の改葬が可能かどうかを必ず確認してください。

Q. お墓と樹木葬、両方を組み合わせることはできますか?

A. できます。「分骨」といって、遺骨の一部をお墓に納め、残りを樹木葬や散骨、手元供養にする方法があります。故人の希望と遺族の気持ちが異なる場合の、ひとつの解決策になります。

Q. お墓を建てる費用は、どのくらいかかりますか?

A. 費用は「永代使用料(墓地の使用権)」「墓石代(石材+加工+工事)」「年間管理費」の3つで構成されます。一般墓の平均購入価格は152.0万円※1ですが、地域、墓地の種類、石材、大きさによって大きく異なります。まずは複数の見積もりを比較することをおすすめします。

Q. 墓じまいには、どのくらいの費用がかかりますか?

A. 墓石の撤去・処分費用、閉眼供養(魂抜き)のお布施、寺院墓地の場合は離檀料、そして改葬先の費用などがかかります。合計で数十万円程度になることが一般的ですが、墓石の大きさや立地によって大きく変わります。


最後に、私たち石屋千鳥がカタログに掲げている言葉をご紹介します。

雲ひとつない空に、産声が響いた朝
病室の灯りが、いつもより白く感じた夜
時計の針ばかりを追っていた、合格発表の日
娘が家を出る日の夕暮れ
初めて孫を抱いた、春の木漏れ陽

人生の節目に
私たちは自然と
大切な人のことを思い出します

ありがとう
 ごめんなさい
  お願いします
静かに目を閉じ、手を合わせる

お墓は、故人だけのものではありません
今を生きるご家族のためにあるものです

そして、子へ、孫へ、百年先の家族を照らし続けます
だから私たちは、墓石を販売しているとは考えていません
お造りするのは「ご家族の灯台」
船乗りに安心を届け続ける灯台の光
ただそこにある、それだけで

お墓にするか、樹木葬にするか。まだ決めかねている段階でのご相談も歓迎しています。私たち石屋千鳥は墓石をお造りする立場ですが、ご家族にとっての最善が別のかたちにあるのなら、それをお伝えすることも私たちの仕事だと考えています。

全国の墓石事例を見る

出典・参考資料
※1 株式会社鎌倉新書「第17回 お墓の消費者全国実態調査(2026年)」
※2 厚生労働省「衛生行政報告例」(改葬件数)
※3 株式会社鎌倉新書「第2回 樹木葬の消費者全国実態調査(2025年)」
※4 株式会社鎌倉新書「第16回 お墓の消費者全国実態調査(2025年)」
※5 「わたしたちの墓じまい」樹木葬経験者調査
※6 厚生労働省「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」(2021年3月)
※7 「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)
※8 コスモラボ「シニア層のお墓参りに関する意識実態調査」(2025年)

資料請求はこちら